それから 夏目漱石
何気なく手に取った「夢十夜」から始まった夏目漱石my boomで「草枕」、「抗夫」、と読んできて4冊目です。
過去3冊に充満していた、あふれ出るような呪術性と幻惑的な幻想はなく、読み出せば散文的で人物描写、ストーリーの進行も一般の小説風です。
最初は少しガッカリもし、むしろ戸惑いましたが、読み進めるうちにやっぱり漱石は怪物の名にふさわしい大作家です。
話は、「高等遊民@漱石の造語。高等教育を受けながら恵まれた経済環境下で、働かずに読書などで時間をつぶす階級」の主人公、代助が、上京してきた友人の妻への恋情をしだいに募らせ破滅へと至る話ですが、要所に出てくる明治時代の東京の夜の描写や、降りつのる雨の情景など私がすっかり魅せられている漱石ならではの幻想風景も垣間見えます。
文学的な評価とは別になりますが、毎日、毎日忙しくて、休日も仕事だったりする私だと、
「僕の知っている者に三軒も四軒も仕事を掛け持ちし、ただ働くより暇がなく、何処に音楽会があろうと行く暇がない。パンを離れ水を離れた贅沢をしなければ人間の甲斐はない。」←大いに略した一文です
なんて言葉には少し寂しくなります。
また
大金持ちの父親から
「実業が厭なら厭でよい。何も金を儲けるだけが日本の為になるともかぎらん。生計くらいどうにでもしてやるから、奮発して何かするが好い」
なんて言われている代助はちょっと、というかかなり羨ましいです(笑
俺ならこれだけで喜ぶんだけどな。
結婚だってあの見合い相手なら充分だよ、なんて思います(笑
なんてことはさておき、恋愛物、恋愛小説には極めて点が辛いというか、そもそも読まない私が珍しくこの主人公代助の気持ちが分ります。
慕情を告白するのは小説でも終盤なのですが、地を這うような現実から遊離して暮らし続け、終生利害を離れてきた代助の告白は、目も眩むほど純粋で胸に迫ったな。
「その生命の裏にも表にも、欲得はなかった。利害はなかった。自己を圧迫する道徳はなかった。雲の様な自由と、水の如き自然とがあった。そうして凡てが幸であった。だから凡てが美しかった。」
恋愛小説で、こんな一文が腑に落ちたは初めてでした。
洋の東西を問わず、純化された恋愛は、やっぱり貴族階級の特権かもしれない。












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