海外の小説

April 02, 2012

シャンタラム下巻 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ@伏線もどんでん返しもあった驚きの自伝的小説

この小説の魅力は、輝くような文章とカレイドスコープからあふれ出たような多彩なエピソードだと思っていました。
そしてそれだけで充分以上に素晴らしい。

惜しむらくは全体の構成で、自伝的小説なるが故に、前もって作者が周到に計算し準備した筋書の巧みさを堪能することは出来ない相談なんだろうな、と諦めていたのも確かなんです。
ところが下巻に至り、実はこの小説には伏線も大どんでん返しもあったということに驚かされる。
ビックリするようなエピソードは、完全フィクションであっても反則ギリギリのラインもあるんだけど、これだけグルーブし、絢爛たる文章で読ませてもらえるんならイイやって思わされますね。

確かにこの下巻にもなると、上、中巻にあった床も踏み抜けとばかりに全開だったアクセルも少し戻されます。
ストーリーのテンポ、というか読者を乗せて走る勢いは少し落ちる。
インドからアフガニスタンにまで舞台が移ると、読者は話の風呂敷を大きく広く感じ過ぎてしまい、ちょっとついて行き難い領域に入ってしまうのだ。
しかし「運命にはいつもふたつの選択肢があるー選ぶべき運命と、実際に選ぶことになる運命のふたつだ」とか
「振り下ろされ鞭のように、沈黙は確実に人を傷つけることができるーしかし、ときとして沈黙こそが真実を語る唯一の手段であることがある」
なんて文章に痺れて読みすすむと、いよいよこのウルトラ長編小説もお終い。

アホだと思われるのを承知で書きますが、個人的にこの小説はカラマーゾフの兄弟より深く感じ入ることが出来、一気呵成の勢いではキングのアンダー・ザ・ドームに迫るものがあった。
生涯最高の中編小説なら「草枕」だけど、生涯最高長編小説の有力な候補ですね。
1800p続いた長編は以下のように、とりあえずの幕を降ろします。
凄い文章だと思うので、まあ読んでみてよ。
「世界に満ちては引く善と悪の潮に、自分たちの生み出したちっぽけな結果を加える。影の射す自分たちの十字架を次の夜の希望の中へと引きずる。
勇敢な心を明日の約束の中に押し出す・・・運命が待っていてくれるかぎり、私たちは生きつづける。神よ、助けたまえ。神よ、赦したまえ。私たちは生きつづける。」

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March 21, 2012

シャンタラム中巻 G・D・ロバーツ@アクセルは以前、床から離れない

この小説は上下巻でなく、上中下巻。
総ページ数1800で、この中巻までで1300p超。
大したモノなのは未だ読者を乗せたクルマのアクセルが床から離れないこと。
「アンダー・ザ・ドーム」では、「アクセル踏みっぱなしの小説を書く」と宣言して成功させたS・キング。
アメリカでも評判になったこの小説をどう読んだのだろう、なんてことが気になる出来です。
その馬力に切歯扼腕した?
ただ感心した?

味わいはクルマにたとえるならキングはアメリカン・マッスルカ―で、ところどころにヨーロッパ的な教養が滲むコチラは欧州車ですね。

造り方も異なる。
完全なるフィクション・ライターたるキングの作法は、中心に大きな題材をおいて、幾多の人が平衡して話を進める方法。
コチラは自伝的小説と謳うだけあって、あくまで主人公の目線で話は進み、実際の人生と同じく、中心となる軸はなかなか見えてこない。
多彩な輝きを放つエピソードから、やっと本筋らしきものが立ち上がるのは中巻も半ばからだ。

圧倒的な魔導師の膂力で読者を包み込むのがS・キングで、現実にこの通りならジェームズ・ボンドは実在した、と言いたくなる力の持ち主がこの著者だ。

中巻の具体的な内容は書きませんでしたが、そもそも優れた小説は、ストーリーじゃないからね。
同じ話でも、これほどの筆力がなければ読めたものではないのは、キングの小説と同じ。

まあ、ここ数十年で最大の作家の最高傑作と比べられる作品である、と。
それでこの小説のスケール、レベルは察してください。

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March 16, 2012

シャンタラム グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ@上巻からの言葉

この小説には素晴らしい言葉があふれているので以下覚え書き
1)賢明さとはある意味、愛の対極にあるものだ。愛は賢明でないからこそ、私たちの中でいきつづけるのではないか。

2)もし我々が痛みのために苦しむことがなければ、何も学ばないだろう。苦しみのない痛みは、努力をともなわない勝利のようなもので、そこから自分たちをより強くしたり、より善くしたりする何か、私たちを神に近づける何かを学ぶことはできない。

3)意思の強さは自己を律することによって培われる、それは自らに科す苦しみのようなものだ。苦しみとは幸せの毒を抑える抗毒素である。

4)人はいつだって信頼することによって他人を傷つけるのよね。誰かを傷つける一番確かな方法は、その相手を全面的に信頼することよ。

5)真実とはわたしたちみんなが好きなふりをしている、いじめっこみたいなもの。友情とは誰も合格しない代数の試験みたいなもの。

6)ものに動じない心を得るには正義という名の制度さえあればいい

7)自分の未来というものは、誰だってひとりひとり稼がなくっちゃならないものよ。

8)賢さなんて利口さから根性を追い出したものに過ぎない。酔っぱらってはいけない。お金を全部使ってはいけない。きれいな女の子に恋をしてはいけない。それが賢いってこと。

9)偽善とはひとつの席をめぐって誰ひとり争う必要のない富める国からきた人々の眼と心に宿る批判にこそある。

10)夢は願望と恐れが出会う場所だ。そして願望と恐れが同じなら、その夢は悪夢と呼ばれる。

11)貧困とプライドは血を分けた献身的な兄弟だ。いつか必ずどちらかがもう一方を殺すときが来るまでは。

12)幸福の重荷は苦しみという慰めによってのみ取り除かれる。苦しみとは自らの神に対する愛を試すものである。

13)天国っていうのは、金輪際人を愛したりしない幸せな人たちの住む世界のことなんじゃないかしら。

14)ラフな普段着に固執するのもある意味、虚栄心よ。それって大した自惚れなのよ。

15)どんな不利な状況でも何も訊かず、文句も言わず、味方になり、肩を並べて戦ってくれる男たち、それが百パーセントの男だ。

16)人間は嘘をつく。他人に対する以上に自分に対して。しかし運命は決して嘘をつかない。

17)もし世界が完璧なら、すべての人間は猫みたいになれる。午後二時には。

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March 09, 2012

シャンタラム上 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ@これは太陽を砕き、その破片で描かれた小説

出版社も商売なんで、本が売れないのは困る。
特に昨今の不況は厳しく、活字離れも甚だしいとか。
だから宣伝文句には始終、傑作、という文字が踊ることになる。
言う間でもなく、いちいち本気にしてはならない。
でも稀に、本当に凄い、とてつもない作品が出てくる。
それも幾多の凡庸な作品と同じく「これぞ傑作」と呼ばれるのだが、真の姿はまるで違っている。
これは太陽を砕いた破片で、白熱した目も眩むような光で描かれた一編だ。

話は、脱走したオーストラリア人の武装強盗犯が、ボンペイのスラムに潜む処から始まる。
どっかで聞いたような凡庸な設定だって?
おっしゃる通りだ。
オーストラリア人の武装強盗犯に興味はないって?
私もなかった。
インドのスラムも興味の対象外?
私も同じく。
それでもなおかつこの小説をひとたび読みだせば、貴方は圧倒的なドライブに誘い出される。
文章は燃えたぎり、ストーリーの飛んでいく先は、まったく予断を許さない。
次々に惜しげもなく繰り出されるエピソードは、シェヘラザードもかくや、という多彩さだ。

「愛について、運命について、自分たちが決める選択について、私は長い時間をかけ、世界の大半を見て、今自分が知っていることを学んだ。」
という一文から始まる上巻は
「人はときにただ希望だけを頼りに愛することがある。涙以外のすべてを振り絞って泣くことがある。つまるところ、愛とその義務、悲しみとその真実、それがこの世のすべてなのだから。つまるところ、人に与えられたもので、夜明けまですがりつけるのはそれだけなのだから。」
という文章で終わる。
どうだろうか?
興味がわいたら是非ご一読。
たぶん後悔はしない。
上巻を読み終えた今の気持ちは、
いやー、小説ってホントウにオモシロイですね。
さよなら、さよなら、さよなら、と映画への愛を語っていた淀川さんの気持ちが、小説バージョンで納得、という感じ。

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August 23, 2009

百年の孤独 ガルシア=マルケス@本当の楽しみは簡単ではないのかも

G・マルケス「百年の孤独」、読了しました。
実はこの本、一度挫折していたので、今はちょっとした山を登りきった気分です。
以下、感じたことを書いていきます。

1)南米文学のマジック・リアリズムを堪能できます
草原に突如出現する帆船、海竜の腹中から出る十字軍戦士の甲冑。罠に掛かる正体不明の怪物、巨大な屋敷を放浪する死者の群れ、三千人を超える死者を乗せた200両を超える貨車、幾度も復活する賢人の霊・・・南米の激しい風土が生み出す幻覚と覚醒が交じり合うエピソードは絢爛たるシーン生み続け読みどころ満載です。


2)性と生は不可分なんだな
巨大な男性器が旺盛な性欲の暗喩となっています。
巨根の男性は常に女性の憧れとなり幾多の交わりを持ちます。
処女はその上で小鳥のように八つ裂きにされ、息耐えそうになることを堪えますが、この世に生を受けたことを神に謝し耐え難い苦痛の中で想像を絶する愉悦に朦朧となりながら破瓜されます。
性は生と不可分であるが明らかにされ、性の味をしめた女性の貪婪な下半身は飽くとのない野心の塊りとなります。
これが導く結論は・・・

3)生の本質は狂気と混沌だ
日本のように理性を基盤とした整然たる秩序の社会に暮らしていると忘れられがちですが、この本を読むと生命の本質はカオスと狂気なのではないか、と思い知らされるます。
それじゃ社会が維持できないので、理性で無理やり押さえつける。
でも社会を成り立たされる理性は氷山の一角、割合から言えば1割位なのかもしれない・・・生命の本質はもっと危険で暗黒を孕んだ恐ろしいもの・・・退治しても退治しても沸いてでは食い荒らす蟻のようなモノ・・・

4)日本文化は自然と共生し、欧州は自然を支配するが、南米は
凶悪といえるほど強い生命力をもつ南米では自然を支配することは勿論、共生すら不可能です。その勢いに人はただ圧倒され確固たる意志も最後は挫かれる運命にある。自然観の違いは興味深いですね。


6)本当の楽しみを味合うのは簡単ではない、それは小説も同じかも
高校時代の友人が大学で山岳部に入ったのですが、冬山の楽しみというのは格別だそうです。夏山に比べると遥かに大変なのは確かなようですが、征服した時の満足感や途中の景色の美しさは夏山にはないもののようです。

小説も同じかもしれません。
確かに今回のマルケスの小説には一般の娯楽小説にはない深い味わいがありました。
冬山(純文学)ばかりでは身体が持たないでしょうから普段は気軽な夏山(娯楽小説)に親しみ、折を見て冬山に登る。
今後はこんなスタンスで読み続けたいと思っています。


今回の結論、らしきもの
読み進むにつれ、灼熱の大地と繁茂する多様な生命が醸し出す毒と狂気と幻想が混在しあい読者は幻惑されて深い夢に絡め撮られるような感覚を味わいます。
そして驚かされたのは何気ないと思われていた言葉が予言であり、蜃気楼のように消え去った村と館に一種の円環構造を見出せることです。
そしてあきらかにされる「百年の孤独」という意味と羊皮紙に綴られていた黙示録の存在
たしかにとっつき難い小説でしたが、内容はノーベル文学賞に相応しい素晴らしいモノでした。

贅沢というとグルメにファッション、高級な酒場巡りやゴルフや海外旅行、時計にクルマやクルーザーetc
色々な種類のモノがあると思いますが、文学を楽しむ、というのは安価であるが故に万人に開かれた贅沢だと思います。

日本は今経済的にも苦しい時代ですが、こういう時だからこそ、文学を楽しむ精神的な贅沢というは見直されてもイイんじゃないかな、と思うのですが、どうでしょう。

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August 15, 2009

トミーノッカーズ下巻 S・キング@巧い凄いオモシロイ!あらゆる恐怖を取り揃え

トミーノッカーズは下巻に入ると俄然、恐怖との戦いが始まります。
色々な登場人物が恐怖との対決を胸に秘めて立ち上がりますが、その運命に手に汗握らされるのです。

別な意味で怖い人も出てきます。
恐怖の対象に一つにせず、こういう隠し味を付けるのも名人芸の手管ですがバッチリ決まってますね。
それでその人の行く末も怖い。
でも嫌な人なのでそれが楽しみだったりもする・・・(笑

手品少年の話も怖い。
この永劫感への恐れは短編「ジョウント」に似た感じがしたのですがどうでしょう?
さらにあの中に入るのですが、入った後も怖い。(この辺のナニカが追ってくる幻想の件は、シャイニングの廊下のシーンに似てる気がしました)
怖い対象を見せた後でも怖いっては実は一流の証拠なんです。

そして何故アレがそこにあったかという理由がまた深い絶望をともなう怖さで怖い。
もし我々がいつか宇宙船が飛ばせるようになっても蹴爪で蹴り合う運命が待っているのだろうか、なんて考えると、ちょっと形而上学的な恐怖がある。

勇躍取材に行く人を襲ってくるモノも笑っちゃうけど怖い。
怖いモノなら下らないガジェット趣味から内面的な思考に至るまで、どんなご注文にもお答えしますって感じのキングです。

ラストはもうあらゆる組織人々が入り乱れ対決決闘、雨あられですが、そこは巨匠の名人芸。
まったく綻びを見せません。
こいうのって見逃されがちだけど凄いと思うのだ。
ともかく二段組ハードカバーで750pをキッチリ弛みなく読ませるんだから大したものです。
馬鹿にされるの承知で書きますが20世紀末、最大最高の作家はこの人だと思うよ。
こんなに沢山傑作モノにした人いないでしょ。

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July 26, 2009

トミーノッカーズ上@S・キング ついにモダンホラーはキングを超える作家を出さずに終わるのか

最近寂しいのがホラー小説界の衰退ぶりです。
力のある新人、誰かいます?俺が知らないだけならイイんだけど・・・
夏なんでホラー、読みたいんですが、ロバート・エイクマンとか買ってしまった。

この本も随分前のモノですが、未読だったので読んでみました。
こうして過去の遺産を食い潰すしかないのは寂しいね・・・

小説の内容は空飛ぶ円盤を見つけて云々という話です。
アホ臭いでしょ。
読む気になります?
今どき「空飛ぶ円盤」ですよ。
エイリアンの宇宙船ならもう30年も前にギーガーにデザインさせたモノすらあるのに「空飛ぶ円盤」・・・その後の展開もそれ自体はよくあるパターンです。

まあキング自身この作品の中で書いてますが、今時、「空飛ぶ円盤」を小説の題材にします、と本気で言うのなら、作家に向いているとは思えません。
少しでも恥の気持ちがある編集者なら、文字通りの空飛ぶ円盤が出てくる作品は、命を張っても出版させないでしょう・・・一生言われそうだもんね。アイツは馬鹿だって。

でも読み出せばそこは圧倒的なキングワールドなんですね。
空飛ぶ円盤、馬鹿にするのは結構ですが、これ以上怖い、オモシロイ作品あるなら出してクダサイって言われるとそうはない。
目一杯アホ臭い材料を最高級の一品に仕立て上げ、上巻だけでハードカバー370pを一気に読ませるんだからこの人の筆力はどうなっているんでしょうか?
考えるとコッチの方が異常で怖いよ。

アホらしさも極まれりというかここに書く気も起きないようなガジェットも馬鹿馬鹿しいなあと思えばこそ、ふっと奈落に落とされるような恐怖が来る。
男の子の作ったマジックの装置は、永劫とか無限という繋がりからキング自身の短編「ジュウント」を思わせました。
サンタクロースが出てきた、心温まるシーンかな、と読んでいるとゾッとさせられる。

まだ上巻ですが、山場では思いもかけない大きな恐怖が用意されている。
結局、キングの凄さっていうのは如何様にも読者を引き回せる比類なき筆力だね。

「弘法、筆を選ばず」ならぬ、「S・キング、恐怖の材料選ばず」でしょうか。
「どんなに陳腐ことでもイイからお題を言ってごらん。怖がらせてあげるよ」って感じ。
大した作家の傑作です。
ノーベル文学賞上げてもイイよ。(本気で言ってます。現代社会、現代人の恐怖をこれだけ優れた表現力で結実させたんだから、名前を残してしかるべき)
続けて下巻を読みます。


ps
キャラクターの気持ちの書き方とか、比喩の使い方とか村上春樹に似ている、というか村上春樹がキングに似ている感じがしたんですがどうでしょう?
春樹はキングファンだったよね。
二人ともアメリカ文学が根底にあるってことで少し似てるでしょうか?

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June 20, 2009

フーコーの振り子 ウンベルト・エーコ @桁外れの知性が語る隠秘学

上巻だけですけど読了しました。
エーコですから大変でしたが、個人的には「薔薇の名前」より格段に読み易かったです。
その理由は今回のテーマが古代宗教や隠秘学に関することで、私の好きな分野なんですね。冒頭から私好みで、
「私は知っていた。その魔力のような穏やかな吐息のなかで・・・その周期は糸の長さの平方根と円周率との関係で規定され、πの数値は人間の知力では解き明かせない無理数であるにもかかわらず、いかなる円であっても、その完璧な比率によって必ず円周と一に結ばれる。振り子の理論的な振幅が対をなすこと、三面からなるπの実体、ルートに秘められた正方形の正体、円の絶対性、という神秘的な秘策によって定められる・・・無限に対して何の震えも感じないほど怠惰で、エンソフとの遭遇という驚異の体験を記憶にとどめることもなく・・・」
なんてんで、これはイケルという感じ。

上記の文章に、これはイケナイと思う人には辛いかな。

ともかく読んでいる間中、無尽蔵ともいえる衒学が後から後から出てくる出てくる。だから意外にも読んでて楽しいんだよね。
例えば、テンプル騎士団、カタリ派、アルゴー船のゴールデン・フリース、「光輝の書」ゾハール、エリファス・レヴィ教団、ガリアのドルイド、ミトラ教会、ヘルメス神殿、グノーシス主義、古代バヴァリア幻想教団、シビラの信託集、タルムードの守護神リリスと両性具有の偉大なる母、エレウシスの秘儀、アレイスター・クロウリー、ナグ・ハマディの断片に記された、「何故なら、私は最初で最後の女性だから。私は敬愛され憎まれた女性、娼婦で聖女」
というようなことが延々と書いてある本です。
でも小説として、ストーリーのダイナミズム、ドライブ感は皆無・・・一端本を置くと中々再読し難い。
でも読み出すとオモシロイ。
こういう本も珍しい・・・

なんだかエーコ位規格外の知性になると、生活するのもそれなりに大変かもな、とも思う。
何事にしろ、すぎる、ってのはさ。
背が高いって普通なら良いことだろうけど、身長が3メートルです、なんてことになると困るでしょ。
良すぎる頭の使い道に困って記号学なんて始めたんだろうか?
そんな気もしました。

下巻が楽しみです・・・嘘です。
少し休みます。
続けては読めないよ。
でもオモシロイよ。
スッゲエ、頭のイイ人の話を聴いている気分になれます。

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June 15, 2009

さよなら、愛しい人 R・チャンドラー/村上春樹訳@題名に失望せず、読むべし

最初にこの本を見たときは、「Farewell,My Lovely」って、コレ、あの「さらば愛しき女よ」の新刊ですか?
チャンドラーは村上が訳してるのに、こんなダサイ題名で単行本って、どこのギャンブラーが刊行したんだよ、と思ったら村上さんの新訳でした。

でも何故に変えたのかあの傑作題名を?
「さらば愛しき女よ」って邦題史上に燦然と輝く逸品だと思うのだけれど。
普通だったら、「買わないよ」、と思う処ですが、村上さんの訳で初めてフィッツジェラルドもカポーティもチャンドラーですら魅力が分ったしね。
これは騙されたと思って買うしかないでしょう・・・

でも読み始めから調子が出ない。
やっぱりこの題名オカシイよ、というこだわりが抜けない。
ツマラナイなあ、人生で読める本って限られてるから、ツマラナイ作品はパスした方がイイかなあ・・・まあ流石の春樹村上でも10割バッターになるのは無理だよね、これは失敗作、なんて思いながらも150P・・・この小説は突然輝き出します。

そうなるとミステリー小説史上に残る傑作ですから、後は一瀉千里。
詩情溢れる情景描写と、事件解決後に明らかにされるマーロウの不可解な行動に引きずられるように読了しました。

この小説、最初に読んだのって、ミステリーの歴代傑作をコンプリートしよう決めて読み出した中学の頃?
ハメットはイイなって思ったんだけど、チャンドラーとマーロウってキザなことばっかり言ってってさ。全然ピンと来なかったんだよね。
なんでこんなにありがたがられるのか?
マッギバーン(←知らないでしょ。今やグーグルしても出てこないよ)の方がイイくらいだ、と思ったんですが、ラストは感動!(すっかり忘れていた)
ああ、イイ話だったんだ。
マーロウはカッコイイよ。(事件後の語りなんてまさにファイロ・ヴァンスもかくや)
今回で完全に魅力が分った。
後の映画や小説界にチャンドラー造詣のマーロウ像が与えた影響たるや、ここで書いていると切りがないので省きますが、スゴイんですよ。
というか男のヒーロー像の神話的原型になったんだよね。

ま、読んでおくもんです。
外せない傑作です。
スゲエや春樹村上!
今のこと打率10割。

psカッコイイ文章をちょっと書いておく
「私は何も言わなかった。パイプにまた火をつけた。パイプに火をつけている男は、実際には何を考えていなくても、どことなく思慮深げに見える」

「漆黒の花が部屋の隅で輝き・・・快適さと、空間のゆとりと、落ち着きがそこにはあった・・・霧の出ていない夜で、すべての色合いが鮮やかで・・・」

「光を顔に受けて目覚めた朝、魔法のかかった谷間に身を横たえつつ、夢を手放すときのように」

「そこには特別な種類の光が、音もなく輝いていることがわかる。それは上流階級だけのために、防音を施されたコンテナに詰められて、届けられるのだ」

「いつもの匂いだ。埃と煙草の匂い。それは男たちの送る暮しの匂いであり、男たちが行き続ける世界の匂いだ」

「男であるというのは時としてきついものだ」

「いつもそういう言い回ししかできないの」
「シェークスピア的なタッチと言ってもらいたい」

「遠慮するなよ、言いたいことは言った方がいい」
「私はキスされたいよ。ひどい人ね」

題名もこの方が良いのかもな・・・女じゃなくて、人の方がさ。

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May 08, 2009

血と暴力の国  コーマック・マッカーシー@それほどのモンですかね・・・

この作品は、アカデミー賞主要4部門他、各国で幾多の賞を獲った映画「ノーカントリー」の原作であり、著者のコーマック・マッカーシーは「ザ・ロード」でピューリツァ賞を受賞したことを始め、現代で最も重要な作家ということです。

でも個人的にはあんまりピンと来ませんでした。
独特の文体は個性的ですが、読んでいてもなんだかスカスカと通り抜けてしまう感じ。
サイコ・クライムノベルなら、呪術的な幻惑に落ちて行くようなエルロイや、ふいっと隣りに座った隣人の冷たい狂気を感じさせるトンプスンの方がずっと深いと思うのですが・・・
骨格は「シンプル・プラン」に似てますよね。
でもアッチの作品のコンビニ店の店長の方がずっと怖かったな。

レクターに匹敵する悪の造形とされた「シュガー」も浅い浅い。
レクターが評価されたのは、殺人鬼という属性を通して、類稀な美意識の存在を示唆できたからで、シュガーはスーパーな能力の持ち主であることは分っても、単なる狂人にしか見えない。
この程度の存在ならトンプスン、沢山書いてませんでしたっけ?

途中の経過を書かない決着の付け方は多少の工夫と思えますが、それならその後に続く物語の意味も不明です。
単なる蛇足としか感じえず、効果的とは思えませんでした。

まあ日曜に映画観ますから、比べてみましょう。
コーエン兄弟の辣腕に期待します。

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