なぜこの方程式は解けないか? 天才数学者が見出した「シンメトリー」の秘密
非常にオモシロい本ですが、400ページを一気に読了してまず感じることは、惜しい、ということです。
何が惜しいかと言えば、題名です。
この本の豊かな内容(数学から量子力学、人類学から音楽、芸術に至るまで)に比べて題名があまりに詰まらなさすぎる。
これではまったく魅力は伝わらないでしょう。
まずこの本のいう、「解けない方程式」とは五次方程式のことです。
ただ解けない、と言ってもそれは四次方程式まではあった「係数の四則演算と累乗根だけで表せる解の公式が存在しない」というだけです。
五次方程式に解の公式がない、なんて常識だ、と思っていたら、なんと人類はそれを300年も探しもてめていたのでした。(この時代、最大の未解決問題だったのだ!)
結局この問題は、アーベルが道筋をつけ、ガロアが群論でもってトドメを刺すのですが、それまでなんとかしようとあがく数学者の奮闘ぶりには頭が下がると同時に、涙ぐましさに気の毒にもなります。
それから本はアーベルの人生を俯瞰し、その不幸な一生を悼み、主人公ともいえるガロアについて語りだします。
エヴァリスト・ガロア、たった20年の人生で数学史を塗り替えた天才には、同じパリが舞台ということもあり、どこかアルチュール・ランボーの面影も重なりますが、この本で明かされる群論の壮大さには、ただ圧倒されます。
群論は「数学的抽象化の最たる技法」であり、素人数学オタとしては、絶対に抑えておかないといけない分野です。
群論はなんとレヴィストロースの名著、「親族の基本構造」から、ソシュールの言語学の体系化にまで、その根本を支える論理的根拠となっていたのでしたあ!
ビックリ、ビックリ!
あらゆる対称性の根底には群論の原理があり、普遍文法の理論は全人類が持つ言語能力の初期条件なのでした。
さらにはなんと1オクターブの音階も群構造になる!
それが人間に心地良いという不思議!
ここまでくると量子力学でよく言われる、未発見でもこんな性質をもつクォークの存在が予言されている、なんてことも群論が明らかにした、対称性からのことだなんてことには、もう驚かない。
宇宙の構造に潜む対称性!の驚異には、読めば読むほど、ただ唖然とするのみです。
以下、素人学問として群論豆知識をまとめておきます。
1)群の概念を生んだのは置換である。そしてn種類の置換の数はn!ある。そして「いかなる群も置換群と同じ型になる」
2)最も単純な恒等変換Iだけからなる群の位数は1
3)方程式が公式で解けるためには、群から入れ子状に生まれる一連の最大正則部分群によって得られる組成因子が、どれも素数になるときである。それを「可解」群と呼ぶ。
五次方程式はそのガロア群の置換群の一つが組成因子60となり、60は素数でない。
よって五次方程式は公式では解けない。
これが対称性を方程式の本質となる性質の根源である。
4)ガロアの群論が対称性の言語となり、自然はその対称性に従う。
非ユークリッド幾何学は宇宙の言語になったが、それから派生したあらゆる幾何学は群論になる。それを証明したのが、クラインのエルラゲン・プログラムで、幾何学を物体によってでなく、物体を不変のままにする変換群によって記述した。
変換の群を与え、その変換によって変わらない要素の集合を明らかにすることが「クラインの四元群」
5)連続変換の群をリー群と呼ぶ。
方程式の可解性の証明に使われたのが正則部分群。
正則部分群を持たない群は単純群と呼ばれる。
素数が整数の基本要素であるように、単純群は群論の基本要素。
すべての群は単純群から作れ、単純群そのものは同じプロセスではそれ以上に分解できない。
モンスター単純群とは、散在型単純群の最大のもの。
元の数は54桁の数字になり、19万6883次元に存在する対称性の集まり。
素数構造で表現すると
2^46*3^20*5^9*7^6*11^2*13^3*
17*19*23*29*31*41*47*59*71
これは人類の知る最も大きな意味のある数であり、いつの日にか人類が物理学の中で出会う構造と予想されている。
6)「群が現れるところでは必ず混沌から単純さが結晶化した。対称性の素晴らしさはその予言の力による。この力が最も発揮されたのが量子力学の標準模型。対称性は科学者の行く道を照らし続ける」


















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