青空文庫

July 20, 2013

冬の日 梶井基次郎@まさにこれこそ冬の情景

夏が近づくと上がってくるのが「これぞ夏、という画像ください」というスレッド。
見るとそこにはいかにも夏、という夢のような光景が写っています。
入道雲の浮かんだ青空の下、子供たちが自転車で走る姿。
降るような星空を見上げるタンク・トップの女の子。
澄んだ海の純白の浜辺に立つ無人のビーチパラソル、テーブルの上にはオレンジ色のカクテル
とかね。
でも、こういうお題を上げられて見る者を納得させるのって中々できることじゃない。
何か一つの言葉が表象するイメージを強烈に具現化する、というのはかなり難しいことなのだ。
その点、この短編小説は「冬の日」という言葉がイメージする情景を、非情に巧く描き上げている。
その孤独と寂寞と憂愁の味は極めて上質で、何度も読み返し、味わいたくなる傑作です。
ああ、そうだ。
寂しい、暗い、陰鬱な「冬の日」に吹く風は、かくの如きモノだった。
光の弱さが象徴する命の細さと儚さと、寄る辺なき不安な暗さとは、確かにこんなモノだった、と思わせてくれるのですね。

作者の梶井基次郎は、「檸檬」などの傑作短編を残しながら31歳で夭折するのですが、そんな影がこの作品にはしっかり刻印され、。

驚きなのはこの小説、書かれてからすで100年近く経っているのですが、まったく古びた感じがしない。
未だに新鮮な感慨を読み手に与えてくれるのは何故だろう?と考えるに、作者の姿勢に、ただ美を追求して果てる、という耽美主義の徹底があり、その分、政治やら人生への信条やらの主張がなく、結果、作品に虚雑物がなく、純粋さを保ちやすく、結果、命脈も長いのかもしれない、と思いついた。
美のみ純粋に缶詰にしました、という感じでしょうかね。

で、こんな短編を読もうと思ったのは、実は冒頭に書いた「まとめブログ」に、良い小説を教えてください、というスレッドがあり、紹介されていたからでした。

某巨大掲示板の書き込みのほとんどは、確かに便所の落書きレベルなのでしょうが、ごく稀にでも、素晴らしい画像やら、こんな小説を紹介してくれる辺り、巨大資本の造りだすバラエティよりインテリジェンス、あるよね。

ps
読み進めている青空文庫シリーズですが、前回からの読了本では、他に、
城のある町にて@梶井基次郎、聖アレキセイ寺院の惨劇@小栗虫太郎、利根の尺鮎@佐藤垢石、スペードの女王@プーシキン、妖物アンブローズ・ビアーズでした。
著名作家のモノであっても、世界怪談名作集はイマイチの印象。
聖アレキセイにも感心しなかった。結局、今回の青空文庫シリーズは梶井基次郎に始まり終わった感じ。ホラーは今の方が良いものが出ていると思う。

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April 12, 2013

地獄変、邪宗門@芥川龍之介:山羊の歌@中原中也:美しい村@堀辰雄、タゴール、魯山人など@青空文庫

iphoneからの青空文庫。
相変わらず読んでおります。
サイズ的にはiPadの方が読みやすいんでしょうし、それならいっそKindle買えよって話なんでしょうが、出先にまで持ち歩くには小さい方が良くてね。
で、前回記事から読んだ中で印象的だったのは
1)地獄変、邪宗門@芥川龍之介
両編ともさすがに芥川で文章のキレは最高です。
地獄変も良かったですが、ストーリーを盛り上げるだけ盛り上げといて未完に終わってしまった、邪宗門がいかにも残念。
芥川では他に「影」も読みました。
こんな神経症的だったから自殺による未完、なんて結末だったのでしょうね。

2)美しい村@堀辰雄
今さら堀辰雄と言って分かる人がどれだけいるかってことですが、私の若い頃は軽井沢、結核、の二つのポジションで確固たる地位がある人でしたよね。
なんかイメージとして少女漫画的美意識の作家だろうと思っていたんですが、プルースト的だったのにビックリ、ということでした。

3)山羊の歌@中原中也
携帯で持ち歩けるとなんと詩集も読みやすいというね。
詩集だけって1冊の本だと面倒でしょ。
続けて読むの飽きちゃうし。
でも他と一緒に入っていれば、口直しに最適なのが分かりました。
山羊の歌を通して読み切る日が来るとは思わなかった。

他では魯山人のエッセイを二編。ろくろ首@小泉八雲、婚期はずれ、雨@織田作之助、明治開化@安吾捕物帳、少女病@田山花袋(物凄い女好きですね、この人)、恐ろしき通夜@海野十三(熱心に書かれたミステリ)、唖娘スパー@タゴール(ノーベル賞作家の)、小利根の桜@大町桂月、十月の末@宮沢賢治、良夜@饗庭篁村
でした。
最近、すっかり本、買わなくなっちゃった。

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February 26, 2013

カフカ、ポー、梶井基次郎、高木貞治@青空文庫はWOWOWに似ている

読んでいてふと感じたのだけれど、青空文庫はWOWOWと似ている。
コンテンツを選ぶとき、こちらが積極的に選択する、というより、すでにそこにあるモノを手に取る、という感じがするのだ。
今回、青空文庫で読了報告をする高木貞治など、どんな巨大書店に行って選ぶことなど出来なかったろう。
すでにそこにあったから読んだ。
WOWOWでも同じような時がある。
最近ではデビッド・リンチのショートフィルム集、マーガレット・サッチャーのドキュメンタリー、メリエスの素晴らしき映画魔術、なんかは、レンタルDVD屋では絶対に選べない。というか、ないだろうしね。
そんな作品と出会える処がちょっと似てますね。

1)流刑地で:フランツ・カフカ@ムカデを丸呑みさせられるような感覚
青空文庫で最初に落としたのがこの作品。
実は紙の本の方で再読しようか、どうしようかと迷っていたんだけど、本の方が古くてね。
文字は小さいし、紙は変色しているしで、再購入なのかどうなのかと・・・
で、青空文庫で再読。
字の大きさも自在だし、一気に読むのが辛くてもその辺になくならないし素晴らしく使い勝手が良いので助かった。
読んでどうかと言うと、今風の怪奇な幻想譚で慣れていると、ビックリするほど愛想のない作家ですよね、カフカは。
読んでいるとなんだかムカデを丸呑みさせられているような感触が・・・


2)アッシャー家の崩壊:エドガー・アラン・ポー@未だに通じる幻影喚起力
幻想怪奇モノの古典ですが、やはり素晴らしい。
ラストの幻影は果たして狂気が生んだモノなのか、人知の及ばぬ怪奇が狂気をむしろ招いたのか、という問いへの答えですね。
みなさんはどう解釈するでしょうか?
ボカシている処にポーの天才がありますね。

3)檸檬、泥濘:梶井基次郎@顔で人間は判断できない
名作として名高い檸檬もオモシロイですが、泥濘も読ませます。
一読、なんとまあ繊細な感性であることか、と驚きます。
ただ檸檬は新仮名使いの方はファイルにエラーがあるみたいなので、旧字体で読みましょう。
再読して後悔なし、だよ。

4)回顧と展望、ヒルベルト訪問記:高木貞治@数学オタクは必読
誰か適当な作家はいないかな、とページをめくっていて高木貞治の名前を見つけた時は一瞬、その好運が信じられませんでした。
日本の誇る類体論の高木先生、エッセイ書いてたんだ!
ヒルベルト訪問記はそのまま、・ダーフィット・ヒルベルトの家を訪ねる話!
数学オタクなら、この設定だけでご飯何杯かいけますでしょ。
回顧と展望もベルリン数学全盛期にゲッチンゲンに留学した話で、しょっぱなからワイエルシュトラス、クロネッカーなんて名前がどんどん出て来る。
最後の方にはクラインも登場!
サッカーに例えると、欧州リーグに行ったら同僚がメッシとかクリスチアーノロナウドがいてさ、みたいなノリです。
類体論が出来た当時の話もあります。
数学オタは必読です。

他の読了作品は
太宰治@青森、芥川竜之介@秋、リルケ@夢、坂口安吾@安吾捕物帳

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February 17, 2013

ああ玉杯に花うけて、或阿呆の一生@青空文庫シリーズからの紹介

青空文庫をPCで初めて読んだ時はピンと来ませんでした。
なんでこんな古臭い、黴の生えたような本を、わざわざPCのモニター越しに読まないとならないのか?
あんまり良い印象、なかったのですが、スマートフォンで読むと実に読みやすい。
PCの前って、やっぱり特殊な環境なんですよ。
正直、モニター越しに長時間読んでいるのは疲れる。
そんな疲れる環境だと、古い本の有難味ってなくなるんですが、スマートフォンという日常性の中だと、古い本も有り難くなってくるんです。
結局、本マニアってどこででも何かしら読みたいので、気軽に携帯出来るってのがポイントだったんですね。

さらには短編1編だけ、とか、エッセイ一つだけ、でも読める。
本だと読みかけ本の山になるのが救われる。
素晴らしいですね。
という訳で青空文庫、私が読んだ中で特にオモシロかった物を紹介していきます。
1)ああ玉杯に花うけて@佐藤紅緑
少年小説として、刊行当時大ベストセラーになったそうですが、さもありなん。物語は推進力に満ち、キャラクターはみな生き生きと躍動しています。
今読んでもオモシロイのなんの。
貧しさの哀しみ。世の理不尽への怒り。道徳性の高さ。
けだし傑作と言える作品でした。

2)或阿呆の一生@芥川龍之介
中学から高校時代にやっていた、「全ての著名文学作品読破計画」中に読んだ時は完全にワケワカメ。
ところが今、読むと実に良く分かる。
素晴らしい言葉がたくさんあって、抜き書きしたくなったんだけど、巧く出来ないのが残念でしたが、音声認識システムでメモに残しました。
iphoneも凄いけど、この作品も凄い。

この他に読了したのは
牧野信一I Am Not A Poet,But I Am A Poet. 秋雨の絶間
河豚食わぬ非常識 北大路魯山人
貧乏神物語 田中貢太郎
秋 萩原朔太郎
酔いどれ船 ランボー
冬 リルケ
ソネット、薄紗の帳 マラルメ
貧と記す 堺利彦
恐ろしき贈物 小酒井不木
怪談会序 泉鏡花
秋の暮 西東三鬼
ある自殺者の手記 モーパッサン
あの世から便りをする話 一座 海野十三
です。
読みかけ本も多数ですが、みんなフォルダーで管理できて、そこら中に散らからないのが有り難い。

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