感動の映画

November 05, 2009

イントゥ・ザ・ワイルド@胸締め付けられる放浪への憧れ、刹那への生

朝から晩まで働いて、休日もあまりない。
学生時代が終わったらすぐに就職。働き出した。
それ以来、営々と働いて生きている。
そんな人生を望んだ訳ではないが、結果的にそうなっているのは、実はそんな生き方が楽だからだ。
そうすれば経済的に安定し、社会的に信用され、日常生活に不自由が起こり難い・・・なんのことはない、自由を対価に差し出して、安定を手に入れているのだ。
この映画は、そんな生活をしている私のような者にはとても眩しく、もどかしい思いを起させる。

ショーン・ペンは天才だ。
全編に渡るカット・バックの構成は揺ぎ無く安定しながら、優れた詩人の感性がないと撮れないようなアラスカの山々や穀倉地帯の夕日などを軽々と差し出してくる。
叙情と霊感に満ちた大自然の風景は忘れ難く、すべてのエピソードは美しい。

「海の唯一の贈り物は過酷さだ。
自分を強いと感じること。
人生に必要な物は、実際に強いことというよりも「自分を強いと感じる心」だ。
1度は自分を試すこと。
自分の頭脳と手しかない。過酷な状況に立ち向かうことだ」
人は弱いから社会という互いに支えあう協力のシステムを作った。
だからそのシステムには不可避的に甘えが忍び込む。
私などその甘えに最も依存している部類であるが、依存しないでは生きられない。

「荒野で何をするんだ?
ただ生きるんだ。
特別な場所でその瞬間を」
ただ生きる!
とっくに忘れた言葉を囁かれた気分だ。なんと力強い決意かと思う。
本当に純粋な生というのは過酷なものなのだろうと思う。
あまりに眩くて直視し難いものなのかもしれない。
色々な煩悩や娯楽は、眩い生の光を弱めるサングラスだ、きっと。


「もし生き方が理性で支配されるなら、人生の可能性は打ち砕かれる
自由とその素朴な美しさは無視をするには素晴らしすぎる」
そして彼はアラスカ滞在100日目には衰弱し、24歳で死んでいった。
彼の見た青空の美しさは、我々には絶対に見えない美しさだったと思う。

「ボクの一生は幸せだった。みんなに神のご加護を」
こんな言葉を残して死んでいけるなら、悔いはなかったと信じたい。
彼にとって長い見通しの立つ生は苦しみだけだったのかもしれない。
その瞬間を全力で生ききる。
究極の潔さだ。苛烈な生の燃焼は、そこにしかなかったんだろう。


ps
蝿が集りヘラジカが腐るのは、人に害意を持つ「蝿の王」へのメタファーだと思う。
原作通りの事実だったとしても、神話的な意味で一致したんだと思う。

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September 24, 2009

バベル @意図せざる悲劇、不可避なる運命、バベルの塔は立ち続ける

もし私がモロッコの砂漠地帯で土煉瓦の家に住み、山羊を飼い、ジャッカルに悩まされていたなら、自分の仕事中、もう大きくなった子供にライフルを与えて見張りをさせるだろうと、思う。

もし私が13.4歳で父親からライフルを与えられたら、誰もいない砂漠地帯だもの、ちょっと撃ってみたくなるとも思う。
そして兄弟で競争になれば遠くに走ってきたバスを狙う位はするかもしれない。
子供なんだから。
当たるとは、ましてや中の人に当たるとは、それが一家の崩壊になるとは考えないかもしれない。

もし旅先のモロッコの砂漠地帯で妻が打たれたら必死になって助けるとも思う。
長年不法移民としてベビーシッターをしていたとしても、息子の結婚式だもの、無理しても出たくなるだろう。
もし説明のつき難い子供を連れて国境を越える時、警備隊に止められた、長年怪しまれ続けたメキシコ人の男としては強引に突破してしまうかもしれない。

聾として育ち、母親の自殺を目にし、疎外感に悩んでいたら、好みのタイプの誰かとともかくセックスしたくなるのかもしれない。

バベル、旧約聖書、創世記第11章に出てくる塔は神の怒りに触れ、この世は言語の不一致と混乱がもたらされとなっています。
塔は人類の不完全さの暗喩でしょう。

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の演出は美しく、出演する俳優はみなリアリティに溢れ不可避的な混乱に逃げ惑い為すすべを知らない人々の姿を映し出しています。
モロッコの砂漠の街のシーンなど、ドキュメンタリーにすら見まがえます。
幾多の章を受賞した映画ですが納得の出来です。

ps
ブラッド・ピットはただのイケメン俳優とおもわれがちですが、名優だと思うよ。
災難に会うアメリカ人夫婦としてケイト・ブランシェット(こちらは名女優として評価すみ)と共演しているが見事な演技です。

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August 20, 2009

シティ・オブ・メン @道を渡る時は左右を見て、安全を確認して

スタイリッシュな映美でリオのギャング団の抗争を描いた「シティ・オブ・ゴット」の関連作です。
前作で銃を持って殺人を犯す子供だった少年が主演していて、成長した姿が見られます(前作と設定は違いますが)

リオの丘に這い蹲るように立ち並ぶ貧民街での生活が主に描かれる映画です。

メキシコにもこういう場所、あったんですよね。
遺跡に行く途中のバスから遠くに見ただけでしたが。
規模は小さかったけどギリシャにもあった。

ああいう丘でも電気なら上の方まで行くそうです。
電気は電線1本で行きますからね。
でも水はダメだそうで、丘の下に貯水槽があり、そこに給水車来る。
上の方に住んでいる人がそこから水を汲みに来る。
背負って上がるんでしょうか?
ウォシュレットがないとダメだ、なんて言っている俺がもしそんな処に放り込まれたらどうなるんだろう?
自動小銃まで持っているギャング団に殺されないとしても、水は飲めず、食べ物も受け付けないだろうな。
思えば自分はなんとヤワな存在なのか? そいうことを自覚します。
でも今更鍛えようもない。
庭のつくばいの水飲んでみたって仕方が無い。

もうヤワになってしまったんだから、ヤワな環境を維持出来るように、自分のやるべき仕事をするしかない。
それが生きていく道です。
だって考えるに、リオの貧民窟の少年たちにだって家はあるんです。
それで夜露や雨風は凌げている。
蛭やムカデや毒虫や蛇のいるアマゾンのジャングルじゃ、あの少年たちだって生きられないはず。
人間は文明と共に自然から遊離して行っているんですよ。
みんながその場その場で最善を尽くすしかない。

ラスト、成長した二人の少年が小さな子供を連れて丘を出ます。
二人にとっては未知の世界へと旅立つのです。
そして道路を渡るシーンで
「道を渡る時は注意するんだ。左右を良く見て安全を確認して・・・大丈夫、行こう」と言います。
・・・暗喩に満ちた感動的な言葉だと思いました。

ヤワになった私も渡らなければならない道はあるでしょう。
その時はやはり左右を良く観て安全を確認して渡ろう。
そんなことも思いましたね。
どんな場所でも生きる、という意味を問いかけられる良い映画でした。

ps
白熱するリオの日差しと紺碧の海。
躍動するためにあるような肉体を持った少年たち(あの身体を見るとサッカーでブラジルに勝てる日は何時だろうと思う)
彼らは二次元にはハマラナイだろうなあ・・・
肉体の持つエネルギーが大きすぎて二次元には収まらないでしょうね。
ま、それは人類の文化の多様性があるのは良いことだってことですが。

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March 03, 2009

エリザベス・ゴールデン・エイジ    恐怖に立ち向かう時、人は輝く

ヴァージン・クィーンとして権勢を奮い、英国を世界最大の強国へと導いたエリザベス1世の物語。映画「エリザベス」の続編で、イングランドはいよいよスペインの無敵艦隊との決戦を向えます。
女王役を演じたケイト・ブランシェットの演技は鬼気迫るもので、女王としての重圧に苦しみもだえ不安と恐怖に慄きながらも前進を止めない姿は感動的です。

嵐の断崖にすっくと立ち、燃え盛る無敵艦隊を見守るエリザベス。
人はみな等しく弱い。
だからこそ運命や困難と敢然と闘う姿は美しい。
そんな普遍的な思いを再認識させてくれる素晴らしい映画です。


この映画、エリザベス朝=シェイクスピアの繋がりを思わせるほど、名セリフ多々です
1)夜、恐怖の影に怯えぬ力を与えてください。
そして真の危機が迫った時に負けぬ勇気を@幾多の悩みの前でエリザベス1世

2)船で大洋を越える時、何週間も目に入るのはまっすぐに何もない水平線だけ
恐怖との戦いです。
嵐が来ないか
病に倒れないか
果てしないものへの恐れ
いろいろな恐れを押し殺し
海図を読み、羅針盤を見守り
順風が吹くことを祈り
希望にすがる
無垢で、むき出しの、か細い、希望に@航海を語るキャプテン・ドレイク

3)王に伝えよ。私は彼も司教も軍隊も恐れぬと
我々に拳を振り上げたら、その手首を噛み千切ってやる@強国スペインに啖呵を切って

4)素晴らしい、秘められた強さ。
未来を乗り切る力になるだろう。
だがご自身を疑っている
不安の色がある。
嵐に襲われた時、人が取る行動はそれぞれ異なります。
ある者は恐怖に凍りつき、ある者は逃げ、ある者は隠れ、ある者は鷲のように翼を広げ、風に乗って舞い上がります。@不安に怯えるエリザベスにジョン・ディー博士


5)愛する私の民よ、敵艦の幌が目に見え、敵砲の音が海を渡ってくる。
じきに敵と相まいえる時がくる。私は戦いの最中に身を置き、あなた方と生死を共にする!
我々が立ちはだかる限り、侵入者を通すことはない。たとえ地獄の軍隊を連れてこようとも!戦いの日が終わったら、天国で再会を、あるいは勝利の野で再会を祝おう@決戦を前にしてのエリザベス(このシーン、泣けた)


ps
劇中に出てくる白髭の博士はジョン・ディーと言って錬金術師にして占星術師にして数学者にしてエリザベスへの助言者でした。オカルトマニアの間では有名な方です。

ps
カソリックvsプロテスタントという構図があり、この戦いに勝った英国がアメリカ大陸進出でも主導権を握り、WASPの元になったんでしょう。
そして敗れたスペインは南米に活路を見出し、インカ帝国の悲劇があった。

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