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April 11, 2012

恋物語 西尾維新@悪趣味でもなく最悪の選択でもない。西尾維新の才気に瞠目する

千石撫子がとてつもない蛇神となってしまった「囮物語」の解決編となります。
箱の表紙に「100%の悪趣味で書かれた」とあったり、ひたぎの選んだのは、「真っ黒で最悪の手段だった」、なんてありますが、なんのなんの。
嫌な野郎だと思っていた貝木泥舟の魅力がじわじわと伝わってくる佳作です。

それにしても西尾維新の才気は素晴らしい。
プロットは練り上げられ、キャラクターの魅力には目を見張るばかり。
随所で語られる言葉も実に印象的で心に残る。
「面倒臭い、という気持ちが、案外人の心を、一番に折るものなのだ。」とか
「根気というものを、大抵の人間は、思っている以上に持たないのだ。人間は怠惰なのだ。怠惰は愚かであるより厄介だ。人を殺すのは退屈でなく怠惰なのだ」
なんて凄いセリフだよね。
利口ぶっているだけの小説に、こんな真実はまず書けない。
そして終盤の千石撫子の人物像を解剖していく件ですね。
充分に「深い場所」まで降りていると思います。

メディア・ミックスの魅力も取り入れられていて、アニメ「化物語」のオーディオ・コメンタリーにあったラッパー撫子の最初の言葉。
それが実に巧く使われていて、一読、吹き出しました。
まさかあの時点でこの作品のあのシーンを書いていた訳じゃないよね。
そしたらもう神がかりの才気としか言いようがない。
恐らくは事後的な利用だと思うのですが、こういうのをアニメ頼り、と言う非難はあたってません。
たとえば近年最高のホラー映画&小説と評価されている「羊たちの沈黙」シリーズ。
この作品は、メディア・ミックス、最高の結実例でもあります。
トーマス・ハリスは、自分の小説が映画化された後に現れたアンソニー・ホプキンス創造のレクター像を、続編となる「ハンニバル」で実に巧く利用してみせた。
あのレクター像があってこそ「ハンニバル」の成功があった。
そういうことです。

私は小説マニアで、ル・クレジオから川端康成まで読むけど、魅力という何より大事な一点で西尾維新作品は世界のトップになんら見劣りしていません。
ライト・ノベルなんてオタクな子供の読むモノと、読まずに斬って捨てている方がいるなら「騙されたと思って、チャレンジしてみな@貝木泥舟」
ですよ。

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