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January 23, 2010

【薔薇の香りに】冬の夢 スコット・フィッツジェラルド/村上春樹訳【窒息しそうな1編あり】

S・フィッツジェラルドの書いた「若き日の傑作短編集」という触れ込みです。
村上春樹が訳すまで、全く魅力の分からなかったS・フィッツジェラルド。
村上さんに訳してもらいやっとグレートギャツビーが楽しめましたが、この短編集はどうかというと、

冬の夢:愚かな男と愚かな女の愚かな恋を描いています。
男はやり手の実業家という設定ですが、それは奢侈に溺れたがる人間が手軽にイメージする金持ちだ。
指をパチンと鳴らすと、金が流れ込む生活。冷や汗も血も流れない労働。
思うだけですべてが可能になる実業。
でも真の芸術の凄みは、その浅薄な感性からも普遍が滲むこと。
「優れた文学にしかつくり出すことのできない奥行きのある哀しみ」という処までは感じられませんでしたが、極めて水準の高い1編で心に残ります。


メイデー:罪の赦し:この二編はツマラナクテ、ツマラナクテ、もう読むの止めようか思いながら読んでました。確かに文章は天才の技なんですが、根底に流れる感性がダメ。
なんとなく「きんきらきんの薄っぺらな作品@当時の文芸評論家」の印象が拭い難い。
フィッツジェラルドはやっぱり私には合わないと思いながらの読了、でも止めないで良かった。
次の作品が驚天動地の1作でした。

リッツくらいの大きなダイヤモンド:
こんな話をフィッツジェラルドが書いていたことにまず驚愕!
リッツ・ホテル位大きなダイヤモンドがあったら・・・という話です。
どこまでも無茶苦茶な話なんですが、書き手がS・フィッツジェラルドなんで、とんでもないことになっている。
才能ってのは恐ろしいね、と思わせる「天衣無縫、留まることを知らない」筆で創りだされた薔薇色の世界は空前絶後。
私は過去、幾多の幻想譚を読んできましたが、これほどまでに甘い香りと毒に満ちた作品を読んだことはありません。

ベイビー・パーティ:小編ですが、好感の持てる、著者の力を感じられる1作です。前作の驚きを冷ますには良い配置でした。

私は本を読み出すと途中、ツマラナクテも投げ出さず、最後まで読む方なのです。
本当はツマラン本はとっと投げ出して次に移るというのが賢いんですけどね。
でも稀にこういう事があるからやっぱり本は最後まで読みましょう、と思ってしまいます。

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