ある図書委員の見たプールサイド憧憬@第3新東京市第壱中学校2年A組
この記事の続きです。
休日だったが図書室を開けるために登校すると、いつもは歓声の立つグランドに誰もいなかった。
休みの日でも野球部やサッカー部、陸上部が活動しているものなのだが、今日は大きな競技会でもあるのだろうか?
体育会系と付き合いのない自分に理由は分からなかったが、シンと静まり返った学校はいつもとは違う風が吹いているような感触があった。
預かっていた鍵で扉を開ける。
暗い室内に電灯を付け、窓のカーテンを開いた。
綾波、来るかな?と少し考えたがすぐに諦めた。
普段の日でも彼女が来るのは10日に1度くらいだった。
そういえば休日にあったことは・・・なかった。
それでも本が読めれば司書役は苦にならない。
間もなく受験を控えた3年が5人、6人と入ってきた。
彼らの目的は静かな環境であり、司書役の出番はないはずだった。
カウンターの裏側に座りマキャモンを読み進める。
12時まで本を読み、チャイムが鳴ると休憩中の札を下げ表に出た。
一段と強い日差しの空を見上げ、プールサイドに行く気持ちになった。
どうせ1時間の昼休み。
リゾート気分に浸ったってイイじゃないか、と考えた。
海パンは持ってきてないし、元々泳げないのでプールは苦手だったが、誰もいないプールサイドのルーフ下の日陰は弁当を食べコーラを飲み一眠りするには良い場所だった。
更衣室を抜け、プールに出るドアを開けてギョっとした。
プールサイドの壊れたままの壁に、両腕と頭と眼に包帯をした綾波が腰掛けていた。

思いもかけない展開に、息がつまり、声も掛けられずに恐ろしくギクシャクしながら離れた場所に持参のバスタオルを引き、弁当を食べ始めた。
なんでこんな時間にこんな場所にいるのだろう?・・・混乱してそればかり考えた。
弁当を食べ終えコーラも飲み終えてバッグを枕に昼寝の体勢に入る間際、彼女のいた場所に一瞬だけ視線を移した。
日盛りの中で本を読んでいた。
表紙から「プルターク英雄伝」なのはわかった。
俺が1週間前に貸出した本だったから。
最初に目があった時、綾波の視線が優しかったな、と思った。
何かイイことがあったのかもしれない。
時に精霊染みて感じるのが、今日は生身の少女に見えた。


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