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August 21, 2008

ダブリンの人びと  ジェイムズ・ジョイス @作品は作家に、感動は読み手に

文学を趣味とするなら絶対に読んでおかなければならない作家、ジョイス。
でもツマラナイことにかけては折り紙付き・・・
ただツマラナイという評判だから読まないというのは、テニスが趣味でも、セカンド・サーブはツマラナイから下から打つ、というのと同じで、ちょっとカッコ悪いでしょ。
ロジャー・フェデラーのアマチュア版とまでいかなくても、セカンド・サーブ、キチンと上から打ちたい・・・できればスピンで跳ねさせたい。
そんなこだわりが道楽というものです。

ちなみに文学趣味は、文庫本1冊で数日楽しめるという経済性に優れ、映画や音楽、アートなどに共有された知識、モティーフが活用できるという利点があります。
何よりまったく流行に外れているというのが非「スイーツ(笑)」的でイイでしょ。

さてこの本ですが、要するにダブリンに暮す人々の日常を描いた短編集です。
ただし山なし、オチなし、感動なし、です。
カミュのように、読んでいるだけでうっとりとする美文ではありませんし、漱石のように、漢文の素養のあった明治人の教養の深さに瞠目、ということもありません。

救いはこの本、巻末に短編1つずつの詳細な解説が添付されているので、あまりのツマラナサに自分の正気を疑うにつれ内容を確かめられるのが良いとこです。
それにしてもツマラナイ・・・
そう思って読み進めた11編目。
「痛ましい事故」で大きな感動がやってきます。
愛の意味、その存在の大きさ、そして何より愛し合ったはずの二人にすらあった断絶・・・
それでやっと感動できた、と思って解説に行くと、この作品、ジョイスは失敗作だと言っている・・・
まあイイでしょう、物語性の排除がジョイスの目指したものなのですから、そんな作者のメッセージもキチンと受け取っておきましょう、といよいよ単独で映画化もされた最終編、「死者たち」を期待を持って読み出します。
・・・わからない・・・私にはね、と思いながら最終ページに、それは
「雪が宇宙のなかをしんしんと降りそそぐのを、そして、すべての生者たちと死者たちの上に、最後のときが到来したかのように、しんしんと降りそそぐのを耳にしながら、彼の魂はゆっくりと意識を失っていった」
と結ばれます・・・
ここで今までの退屈の意味がやっと分かった気がしました。

ジョイスの狙ったものは、安易なフィクションがもたらす薄っぺらな感動、あるいは暇つぶしではなく、退屈な日常をすごす我々へ「永遠」を訴求することなのではないか?

ところがこれまた巻末の解説を読むと裏切られる。
この「死者たち」は本来、このダブリン市民に加わる予定ではない1編なのでした。
そうなると、私の結論は意味をなさなくなります。
ただここで考えるのです。
私はS・キングの特に初期の作品が好きなのですが、キングに言わせると自分の一番の作品は「ダーク・タワー」だという。
なら他の作品に感動しているのは作者の意図が分かっていない、ということなのでしょうか?
違うと思うのです。
作品は作者のものですが、あらゆる作品が生み出す感動、あるいは失望は、それを感じた人のモノですよね。
だから私はジョイスをとりあえずそう結論付けます。

ps
あまり読む気にならなかった記事かと思いますが、それでも読んでみようと思った奇特な方にアドバイスするに、こういう本を読みきるのに一番必要なのは環境。
長時間のフライト、なんて時が絶好ですね。
これからお出かけの方は、傍らにぜひ忍ばせて。
逃げ場のない環境なら読了できます。
そしたらあなたも明日からジョイスの読了者です。

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