サンシャイン2057 「神」への暗喩に満ちた大人向けの映画!
死にかけた太陽を救うため、核爆弾を打ち込みに行く宇宙飛行士の映画・・・という紹介を聞いたときは、その馬鹿馬鹿しさに子供向けのアドベンチャー映画かと思いましたが、実際はダニー・ボイル監督のメタファーに満ちた映像センスが光る大人向けの映画でした。
まず最初になぜこの設定が馬鹿馬鹿しいかというと、核爆弾は、確かに人のいるところで爆発させれば大変な惨禍を招く兵器ですが、これまで太陽の110分の1(人間の縮写なら、身長1.7センチのフィギュアです。自分の身長と1.7センチを比較してください)という地球の地上で地下で何千回という実験が行われてきたことからも分かるように、それがマンハッタン島の大きさだろうが、世界中の核物質を集めたものであろうが、太陽の中では蚊に刺されたというより蚤が這った程度の効果もないでしょう。
さらに表面を覆うコロナは100万度。爆発させる中心部は1500万度!
こんなのに耐えられるマテリアルなんてないでしょ。水素原子の核が融合してんですよ。
さらにお隣の国でも制作に苦労しているようですが、一応結構なレベルの制御技術がいるわけです。
そんな異常な高温に耐える精密機器がありますか?
そもそも太陽の中心部では、自身の重力により自発的な核融合反応が起こっているわけで、そこに同じ核つながりとはいえ爆弾破裂させたてどうする・・・
それにイカロスという名前も気に入らない。
イカロスなんて、跳びすぎて太陽の光りで墜落するものの象徴でしょう。
再び光りを、という思いを込めるならプロメテウスと呼ぶべき、なんてことも言いたくなる。細かいことのようですが、オタクはこういうことにこだわるの。
なんて思いながら見ていたのですが、いきなり宇宙船の展望室で遮光フィルターを3.1%に上げる。それが網膜の限界だ、なんてシーンが出てくる。
そしてその光りがまことに凄まじい!
まさしく人が見つめることの適わぬ神の光り!
「人は死と太陽を直視出来ない」、という言葉がありますが、それを暴力的な映像として表現したのは見事な暗喩です。
そう太陽こそは、我々を含む地球の生きとし生けるもの全てを生み出した創造者、「神」そのものとも言えるわけです。
そして古代より、その「神の光り」を見つめることは、人の限界を超えることの大いなるメタファーなんです。
カバラの経典に、無限の輝き放つ神の衣を見た者は、すべからく狂気と死に至るという話がありますし、また神の言葉の深淵に触れようとする極一部の天才的な数学者(数学こそ神の言葉です)が狂気に至る時、概念の天界に挑む時の過酷さを指して、
「神へと至る英知に挑む天才達は、その輝かしい光りに魅了されるあまり羽を焼かれて落ちるのだ」とも言います
そして熱の描写も圧倒的です。
シールドから僅かにそれただけで襲い掛かってくる膨大な太陽の熱量。
人類の英知をつくした宇宙船を容赦なく、いとも簡単に焼き払うひたすらな炎、炎の描写もまた、人の矮小さと太陽という神の残酷な本質を良く伝えていたと思います。
不気味な沈黙と暗黒に満ちた宇宙船内部の描写も、その暗さが引き換えた存在を思わせてある種の詩情を想起させます。
「人類の夢など愚かだった。我々は塵に過ぎない。神は我々に死を与え、すべて塵に変える」映画の某所に出てくるセリフですが、これもまた隠喩にとんだ言葉です。
果たして人類の夢の行方は塵に行くつく他ないのでしょうか?
それともいつか神の偉業を越えるのでしょうか?
私は後者である、と信じてますが。
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