杯(カップ)―緑の海へ― 沢木耕太郎
沢木耕太郎さんが日韓両国を往復しながら、あのワールドカップを取材した1冊です。
この本を読んでつくづくと感じるのは、旅も「才能」だということ。
「深夜特急」は私も夢中になって読みましたが、あの奇跡のような旅は、確かに幸運だけでは出来なかった。今回は韓国、日本のひたすらな往復ですが、行く先々で恵まれた経緯が多く、沢木さんは旅の天才だと思いました。
またもう一つは人徳ということ。
韓国での出来事はひたすら良いことばかりで、日本では変な女性観客に悩まされたり、意固地な女性スタッフに嫌な思いをしたり、と散々です。
コレ普通に書かれると反感を感じるんですが、沢木さんが書くと、
「そういえば俺が見に行った試合でも、変な女の客がいたよなぁ」とか
「そうそうサッカーじゃないけど、某所で信じ難いほど意地の悪い女のスタッフに嫌な思いした」
などと不思議に同感させられてします。
まぁこれも文章の魅力が抜群なことが背景なわけで、
「私はサッカーにはホントに素人で」とおっしゃる通り確かに古くからのファンでないのですが、
試合の描写が始まると、それは生き生きと躍動しだし、思い出が蘇ってくる。
大したものだと思うのですよ。
よく英語だけ学んでも、日本語としての教養がなければダメ、なんて云われますが、サッカーだけ詳しくても、エッセイはスポーツや人間を見る目が基本なんですね。
楽しかったエピソードは、毎年イタリアにワインの試飲に行くタクシー運転手とのことで。
日韓両国で試合を追うのに疲れたなんて言葉に、
「疲れたなんて言っちゃいけないよ。あんたの背後には何千万だかのあたしらみたいな、ナマで見たいけど見られない人がいるんだから」
なんて言葉が返ってくる。
これにはグッとくるよね。
ホント、私事ですが、私も行けそうな試合に、申しこんだチケットはみんなハズレ。
仕事や会合も抜けられず、テレビ観戦すらやっとだったよ。
またフランス大会でのことだけど、取材中一緒にいた通訳の女性が美人だったので、普通なら近寄ることも出来ない、ロシアやジャマイカの監督が寄ってきた、なんてのには笑いました。
向こうの連中はスゴイわ。
ps
沢木さんは認めているけど、あの大会での韓国、vsポルトガル、スペイン、イタリア戦は酷かったと思うよ。
あらゆる視点(W杯10大誤審DVD@FIFA制作)から考えても。
ps
「君が代」に妙な批判をしてるけど、俺は聞くにつれ深い味わいのある良い曲だと思う。
確かに他の国歌のように勇壮な曲でないことは確かだけど(サイドブレーキを引いたまま坂を上がる自動車のよう@確か村上春樹の言葉)、それだけ日本文化、民族性の独創性が出ていると思う。
そしてグローバルに競争が繰り広げられる時代の何よりの武器は、「独創的」、ということだ。
韓国での旅も味わい深いし、旅とサッカーの両面で楽しめる1冊でした。
















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