羊たちの沈黙@ジョナサン・デミ
トーマス・ハリスの傑作小説を映画化し、91年には、なんとアカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞、脚本賞の主要五部門を掻っ攫った1本です。
この映画、語るべきことが多すぎますが、冒頭のシーンから「聖」と「俗」、「善」と「悪」「卑しさ」と「高貴」という対照点に絞って書いてみます。
この映画は、それがひっくり返っているところが幻惑となり惹きつけられるのです。
1)クラリス(ジョディ・フォスター)の魅力について。
早暁のFBIの訓練所でクラリスは息を切らせてフィールド・アスレチックに挑んでます。
ジョディは小柄で、腕力もなさそうで、動きにも切れはありません。
その後に出てくる肉体派女優のアンジョリーナ・ジョリーやジェニファー・ロペスのような野性の身体能力はありませんが、それを超える心の強さ、「苦しみ」や「痛み」には打ち克つだろうな、
という強い意思を秘めた表情が魅力的です。
正義の為には自らの危険もいとわない彼女には「聖性」があります。
彼女が会いにいくのが、映画史上、最も魅力的な「悪魔」、レクター博士です。
2)卑しさの象徴、Drチルトン
途中に会うのが、刑務所の医療管理医師、でDrチルトンです。
彼は社会的には悪いことをせず、仕事に励み出世をしたいわば社会的な「善人」ですが、
若いクラリスの肉体に目をつけて口説く下卑た俗物です。
自分が常に評価されていなと不安になる小心者でもあります。
3)ハンニバル・レクターの肖像
何重にも閉じられた鉄格子を抜けて抜けて地下の迷宮のような牢獄にカメラが入る頃には、
観客はそのただどこのなさに、どんな怪物が出てくるのか、と思っていると、
シェイクスピアの舞台劇に出てくるようにアンソニー・ホプキンスが、胸を張り、バレエのダンサーのように片足を引いて立っています。
立ち居振る舞いは優雅で、言葉にはインテリジェンスがあふれています。
揺らぐことのない蒼い硬玉のような瞳は、困難な状況にも冷静で自分を見失いません。
アンソニー・ホプキンスの創造した、奇跡ともいえる極めて魅力的なキャラクターです。
そんなレクターがクラリスに惹かれるのは、その内面に、克己心や、正義感、勇気、があるからです。
「悪」であるはずの者が、他人の内面の「高貴な属性」を評価する。
これは矛盾です。
対してDrチルトンはクラリスの肉体にだけ目をつけ、その豊かな内面への共感はありません。
「悪」がクラリスの魂を評価し、「善」であるチルトンには若い女の肉体しか見えていない。
困難に泰然とする悪に対し、少しのことでうろたえる善。
聖なる者の気持ち(と観客の気持ち)が、どちらに傾くかは自明ですが、そんな二律背反的な困惑が魅力になってます。
とここまでで冒頭の30分です。
傑作といわれるわけですよね。
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Tracked on February 28, 2007 at 02:22













Comments
こんばんわ。コメント有難うございました。
「羊たちの沈黙」は「いっしょにいると疲れる人」と言う本でユング心理学に基づいて上記登場人物+クラリスの上司で分析して面白いですよ。
Posted by: furitann | January 31, 2007 at 23:06
こんばんは。
>コメント有難うございました。
とても楽しい記事でしたね。
>いっしょにいると疲れる人」と言う本でユング心理学に基づいて
やっぱりネタにされてましたか(笑
みんな見事なキャラクターですものね。
Posted by: 晴薫 | January 31, 2007 at 23:29