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September 23, 2006

物理学者、ウォール街を往く。:2     エマニュエル・ダーマン

この本は一回記事にしたのですが後半に面白い記述があったのでちょっと書いてみます。

実際にOPを取引していて、OTMのIVが高いことに(IVがスマイル、或はスキューを描くことに)違和感を覚えたことがあるでしょうか?
ありませんよね。
行動ファイナンスから云われる「些少確率の過大評価」なんてことを指摘されるまでもなく直感としてこれは価格が大きくブレークするかどうかへの賭けだ、と理解できます。

しかしその疑問をただ放置せず、数学的に解決するためダーマンは果敢に挑みます。
そして隣接価格帯の二つのOPと期限が切れたすべてのOP価格から偏在する局所ボラティリティを決定するアルゴリズムを発見します。
「日本人は科学では世の中の動きを説明できないという信念をもっているように思われる。社会科学に計量的手法を持ち込むことに欧米ほど積極的でない」
という指摘が身につまされるところです。

と感心していると数ページ後に、ただこれは株価のジャンプする可能性を排除していたのが問題だ、とくる。
?????
それを説明した理論を完成させたんなんじゃないの?
「超短期のボラティリティスマイルの形状は、ジャンプへの可能性が主要因」とある。
だからIVが高いんでしょう、と思う
・・・
「そしてジャンプはヘッジするにはあまりに激しくかつ不連続であるため、ブラック・ショールズモデルに組み込むと整合性の多くが失われる」
「それでもジャンプは現実に存在し、それを排除することはモデルの現実性を弱めることになる」、と言います。

この本の最終章は、「偉大なる見せかけ師」で
ダーマンは、人間の複雑な心理を捕らえられる数学モデルなど存在しない。
「愚か者が自分の愚かさを言い張れば、賢者になる@ブレイク」
という言葉を引用し、一種、自己否定ともいえる誠実な言葉でこの本は終わります。

ただ80年代以降の金融工学がすべて否定されたわけではモチロンなく、
日経平均の変動とドル相場の変動を同時にヘッジするエキゾチックOPを組み込んだ仕組み債の開発など、実際に商品となり多くの経済的な貢献をしたことも事実であり、
また売り手としてそんなポジションを大量に抱え込みその潜在リスクの計量化に腐心し、
結局、「流動性の低い証券価格は同じペイオフをもつ流動性の高い証券の価格である」というトホホな結論も為になりました(笑
今後十分に参考にしたいと思います。

著者の妥協を許さない「我々は断固として事にあたり考え挑戦し続ける」という姿勢と誠実な内省には好感が持てました。
ダーマンの研究は今後も続き、若い有能な後継者も育つのでしょう。

ブラック・ショールズ式は、未来をブラウン運動の正規分布の中に読み解こうとします。それが基本的な限界です。
ただ「断固として事にあたり考え挑戦し続ければ」いつかまた大きなジャンプ、ブレークスルーが訪れるでしょう。
そんな世界をまた見たいものです。

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