夜市 恒川光太郎
第12回日本ホラー小説大賞受賞作です。
このコンテストが出来たのが1994年。
大手書店らしいフットワークの悪さで、モダン・ホラーのブームも少し陰りが見えた頃でした。
ただ世間的にはホラーはブームであっても私にとっては一番好きな分野なので、遅れ気味の登場でも嬉しかったのを憶えています。
第1回はすでに「死国」でファンになっていた坂東真砂子さんが佳作に入り、芹澤準さんの「郵便屋」が妙に気に入りました。
ところがその後は、大ベストセラーになった「パラサイト・イヴ」はまったく好みでなく、岩井志麻子もダメで、唯一瀬川ことびの「お葬式」は気にいったものの、選者に林真理子が出てきたせいもあり、ちょっと距離を置いていたのでした。
そんな中、この本は書店で見かけて直感が囁いたのです。
「夜市」・・・題名がイイですよね。
二編の作品が納められていて受賞作になった「夜市」は、異形のモノが集う異界の市場で、昔、弟を売り、野球の才能を買ってしまった少年とGFの話し。
文章は決して唸るような名文続きではないのですがほど良い感じ。この手の小説がみんな漱石の「夢十夜」みたいでも見事過ぎてクタビレル。気楽に楽しむには手頃ということが肝心なんです。
娯楽映画をルキノ・ヴィスコンティに撮られても困りますからね。
気楽に読めて、十分にその世界にも入っていけました。
構成も見事で、後半いわゆる幻想物語の定型を裏切る展開が用意されており大変楽しめました。
もう一つが書き下ろしの「風の古道」。
実際は受賞作よりコッチの方が長く、単行本で新人の書き下ろしを買わされたのかと気づいた時は失敗した、と思ったのですがコッチも面白い。
この世の狭間(「トワイライト・ゾーン」や「世にも奇妙な世界」的な)にある「古道」に迷い込んだ少年の話しなのですが、この感覚は私のツボを突いてます。
「どこかにすべての家が背を向けて立っている、決して踏み込んではいけない道がある」
以前、ドライブ散歩に凝っていたことがあるのです。
適当にドライブしては良さ気な処でクルマを停めてその周辺を散策するのですが、気持ちのどこかでこんな幻想的な道に入ってみたいという思いがありました。
実際に入ってしまったら大変なんですが、退屈な日常からの逃避願望です。
鬱々とした時間を、一時忘れさせてくれる1冊でした。
郷愁と幻想と恐怖の世界で、日本流に味付けられたブラッドベリ風かな。
恒川光太郎さんには今後注目します。
少なくても次作は見ずテンで買いますね。
早く読みたいです。
その位気に入りました。


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