名もなきアフリカの地で
人種の違い、生まれ育った環境の違い、性の違い、背景となる文化の違い、年齢の違い、立場の違い・・・
そんな属性のすべてを乗り越えて、人と人が理解しあい、信頼しあい、愛で結ばれる姿の普遍的な素晴らしさを描きアカデミー外国映画賞を受賞した作品です。
ストーリー自体は、ナチスの迫害を逃れてまさに「名もなきアフリカの地」で苦闘する夫婦と
一人の少女の数年間のドラマ・・・ありふれた話です。
ただ背景として描写されるアフリカの大自然の映像が美しく、エキストラの原住民の笑顔が魅惑的で、
そこから監督とカメラマンの力量を感じます。
そしてなんといっても、1人の主演俳優と幼い女優の魅力。
主演の少女レギーナを、子供の頃をレア・クルカが10代になってからをカロリーネ・エケルツが演じていますが、
特に幼きレア・クルカにはただただ見とれる魅力があふれています。
何故そうなったかといえば、「犬も友達も怖がっていた」という設定の少女が、急速にアフリカに慣れ、
現地ムクタニ村のポコット族、ンジェム族とも本当に仲良くなったという、
演技を超えた交流があったからではないでしょうか。恥じらいと好奇心、悪戯ぽい笑顔・・・小鹿に惹かれて1歩を踏み出すあの瞬間の可愛らしさ。屋根に登って「ここは世界で1番きれい」・・・
おそらく彼女はアフリカの自然に本当に親しみ、同年齢のアフリカの子供たちと、心の底から遊ぶことを楽しんだ。
見る者にはそれが自然に伝わったのです。
もう一人、本当の主役は、現地で雇われる料理人のオウア役のシデーデ・オンユーロ。
信じられないくらい長い手足のスラリとした身体は、アフリカという大地の生んだ精霊のようで、
画面に映し出される瞳の光の奥深さ、一つ一つのセリフを発するときの繊細さ、微妙な表情の多彩な表現力は、
すでに演技を超越しており特筆するものがあったと思います。この人はまたぜひ他の映画でも見てみたいですね。
ラスト、「小さなメンサブ」と言って終始、愛を注いでくれたオウアは「太陽を待っているのです」と別れを告げ、
生きる上での諦念を自然なものとする精神の崇高さを見せます。
あの去り行く背中の美しさは、耐える心を失い、我慢を不要とし、すべての欲望を善とする現代の文明人が失った、おそらく最も尊いもの。
本来は生きとし生けるものが本来持っている、最も深い尊厳なのだと感じました。
PS
バナナのエピソードも良かったけどね。
私は黒人の音楽と身体能力に魅せられている一人なので、
何気なく挿入されるアフリカの夜の儀式で歌われる音楽にも酔ってしまい点が甘くなったかもしれません。


Comments
はじめまして。 本当に仲良くなったかどうかはわかりませんが、私もムクタニ村には何人か知り合いがいます。 イルチャムス(ンジェム族)の人たちにはお世話になりました。
オウア、よかったですね。 DVDのスペシャルに入っているインタビューを見て、余計に好きになりました。 素晴らしい話し方をする人です。 原作者のインタビューも面白くて、背景がよくわかったような気がしました。
いずれにせよ、私も「外部者」としてバリンゴ県(ムクタニ村のあるところ)で過ごした訳で、同じような出会い、触れ合いを通じて、人との関係を学ばせて貰った、そんな気がしています。
何だか、私的なコメントで申し訳ありませんが…。
Posted by: AXBXCX@ダッカ | April 05, 2005 at 09:22
こんばんは、AXSXCX@ダッカさん。
>何だか、私的なコメントで申し訳ありませんが…。
とんでもありまません。
今、ブログ拝見しましたよー。
スゲエ!!!
感動してます。ネットって凄いね。
だって全然、いる場所の違う人とこうして知り合える。
写真、綺麗ですね。
とくに朝霧と哀愁に満ちた犬の背中の写真(笑
子供達もイイ。
ムクタニ村にも行ったのですか。
俺は虚弱体質なので無理です(笑
お体に気をつけて下さいね。
Posted by: 晴薫 | April 05, 2005 at 20:56
ありがとうございます。
田舎に出ていたので遅くなりました。
ケニアのあの辺りは標高が高いので、
山の上は上高地のような感じです。
下はさすがに暑いですけれど、
乾燥しているので汗をかきません。
日本にいると花粉症もあるし、
大気汚染等もあるし…、と考えると、
虚弱体質の人ほどムクタニ村はいいかも。
最後のページの大地溝帯の虹の写真とか、
かまどの写真は、ムクタニ村で撮ってます。
また映画の人を雇うシーンで、
少年を連れて来る役の人は、
ムクタニ村の長老の一人で、
顔を覚えてます。
Posted by: AXBXCX@ダッカ | April 15, 2005 at 04:15
こんばんは、AXBXCX@ダッカさん。
田舎に出ていたと言っても迫力のある田舎なのでしょうか?
>虚弱体質の人ほどムクタニ村はいいかも。
無茶ですがな(笑
私は自然環境には極めて虚弱なんです。
虫とかダメ。肌が弱いんです。すぐかぶれる。
トレッキングなんかでも最初にバテルのが俺。妻にも娘にも呆れられています。いつもバーバル挙げてんのに、なにやってんの、って感じ。自転車は強いんだけどね。宮古島では走りまくり父親の威厳をしめしました。歩くのが弱いんだよね。
>ムクタニ村の長老の一人で、顔を覚えてます。
ダッカさんには、まさに身近な映画なのでしたね。
Posted by: 晴薫 | April 15, 2005 at 22:14