« 「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」 | Main | ブロンド・ライフ »

November 23, 2004

裏窓

 ヒッチコック監督作品。
 ホラーでもなく、パニック・アクションでもなく、一滴の血を見せることなく、
観客にサスペンスを与えられるスリラーという上品な形式の作品群が、かつて世界とハリウッドにはあったのだ。
 これはそんな作品を撮らせたら、天才的才能を発揮した、
ヒッチコックという監督のその古き良き時代の記念碑的傑作。

 原作はコーネル・ウーリッチ(が本名、ただしウイリアム・アイリッシュという筆名の方が有名)の短編。
 ウーリッチは、ニューヨークを愛し、作品を自分のタイプライター(黒衣の花嫁)や、ホテルの部屋(幻の女)に捧げ
(この2つはミステリー史上に残る傑作。作品の特徴が、謎解きやトリック、風俗の描写ではなく、普遍的な人間の孤独感や、ある種の神経症的な恐怖感に訴えるので、作品が古びない。「黒衣の花嫁」、「暗闇へのワルツ:映画名は暗くなるまで待って」はトリフォーが映画化)一生独身だった人。

 歴史的に振り返ると、大都市という人工的な空間が生みだす哀愁と叙情、独特の異常な状況での恐怖を、
詩情豊かに描くことに成功した最初の作家かもしれません。

 そんな作家の書いた話しは、真夏のニューヨークのアパートの部屋々々の人生絵図を見せながら、
快調なテンポで進んでいきます。
 原作は1942年、エアコンが完備して無かったせいか、みんな窓を開け放し、(それだけ治安も良かったんでしょうが)コンクリートの高層アパートだけど、猥雑な雰囲気がなんだか、日本の長家の夏を覗いているみたいでどことなく親近感が涌いてきます。
 
 足を骨折して、目の前にそんな光景が広がっていれば・・・悪趣味だけど、日がな一日覗いて暮らすかもしれないなー、とリアリティを生じさせるところがまず上手い。

 ポメラニアンが3階の窓から、籠で降ろされ、散歩が終わると引き上げられるエピソードは、
ユーモアたっぷりでカワイらしいだけでなくしっかりと本筋と絡んでいる。
ヒッチコックの演出の妙です。
 人を怖がらせるには、上品なユーモアを交えると、緩急がついて効果的なんですね。
でもその両方を上手く成功させるのは難しい。実に高度なテクニックです。

 グレース・ケリーの夢のようなナイトガウン姿はまさに美神。
背中を露出したショットでは、芸術的な肩胛骨の張り出しが観られる。
指輪を取ってから、はしゃいで背中で手を振る天真爛漫さ!
ヒッチコックが主演に抜擢する女優は、みんなブロンド美形のクール・ビューティタイプだけど、
やっぱりダントツの美しさ。

 一方、ジェームス・スチュワートも端正なハンサムだけど、今のハリウッド俳優から見ると、信じ難いほどの胸の薄さ。肋骨が浮いているけど、今ならあり得ない絵柄ですね。
 エクスサイズが如何にハリウッドの俳優の体型を変えたか、参考にすると面白いです。
 G・ケリーが危機に陥ったり、自分が危なくなるなど、いざとなると情けなくて、オマエ本当に報道カメラマンで、
ケリーに威張っていたようなハードな生活に耐えられるのかと・・・見栄じゃないんかと・・・

 ラスト、両足骨折のJ・スチュアートのベットで、悠々と寝そべるG・ケリーがヒマラヤの本から、ファッション雑誌に持ち代えるが、それが二人の未来を暗示しているなら、慶賀の至りなんですけどね。

|

« 「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」 | Main | ブロンド・ライフ »

Comments

ヒッチコック監督の「海外特派員」に注がれた熱意で僕は彼にハマった。
この映画、暗殺現場に群れる傘、
数ある中で一つだけ逆回転する風車、など
ヒッチコックのビジュアルセンスが取り沙汰される映画だが、

アルバート・バッサーラ扮するオランダの政治家ヴァン・メイアに対する人物描写は脇役に対するソレではない。

昔から、主役を引き立たせるために脇役の描写をいい加減にしている作品には映画だろうが小説だろうがドラマだろうが漫画だろうが、嫌悪感を抱いてきたが、ヒッチコックの作品はそれを払拭してくれる。

Posted by: フィジカルプランナー社長 | January 15, 2005 at 20:41

「海外特派員」おもしろそうですね。でも残念ながら見てないのです。
今度見てみます。

私のヒッチコック体験は「鳥」で、不条理の恐怖というものを初体験させてくれた人。
「サイコ」で天才の演出は時代を超える、と認識させてくれた人です。

同時にG・ケリー、K・ノバック、などのクール・ビュティーを恐怖の中に艶やかにとけ込ませ、エロスとタナトスは1枚のコインの表裏なのだと教えてくれた人です。

Posted by: 晴薫 | January 15, 2005 at 21:45

私、これぞ名作だと思います。
何度みてもやっぱりいいなぁ・・・
グレース・ケリーは美人♪

Posted by: chibisaru | October 28, 2005 at 19:01

>グレース・ケリーは美人♪
ヒッチコック一番のお気に入りだったんですよね。

Posted by: 晴薫 | October 28, 2005 at 20:14

 はじめまして。

私も映画好きなひとりです。
こちらの記事は詳細で楽しいですね~。
私も先日、「裏窓」について記事にしました。
よかったらいらして下さいね~ではまた!

Posted by: ルーシー | November 03, 2006 at 02:54

はじめましてルーシーさん。

>こちらの記事は詳細で楽しいですね~。
ありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いしますね。

>よかったらいらして下さいね~ではまた!
これから伺います。
TBもしちゃいます。
ではでは。

Posted by: 晴薫 | November 03, 2006 at 20:10

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58081/2042719

Listed below are links to weblogs that reference 裏窓:

» 裏窓[Rear Window] [ヒトコトシネマレビュウ]
★上品なるアメリカンサスペンス裏窓1954/アメリカ 監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ ⇒☆この映画を、【TSUTAYA DISCAS】でレンタルする☆『他人の生活を覗き見る』話なのに、いやらしさや下品さはなかった。舞台劇のような小洒落たミステリー、... [Read More]

Tracked on June 02, 2005 at 22:15

» #216 裏窓 [風に吹かれて-Blowin' in the Wind-]
製作:アルフレッド・ヒッチコック 監督:アルフレッド・ヒッチコック 原作者:コーネル ウールリッチ 脚本:ジョン マイケル ヘイズ 出演者:ジェームス・スチュアート 、グレース・ケリー 、レイモンド・バー 、ウェンデル コーリー 、セルマ・リッター、ジュディス・イヴリン 1954年 アメリカ これぞサスペンス?グレース・ケリー、美しい・・・ 楽しむ要素もたくさんあり、引き込まれるようにラストまで・・・ 素晴しい。まさに名作。 是非、ご覧下さい。 ・... [Read More]

Tracked on October 28, 2005 at 19:00

» 映画評「裏窓」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中) 1954年アメリカ映画 監督アルフレッド・ヒッチコック ネタバレあり [Read More]

Tracked on March 26, 2006 at 00:46

« 「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」 | Main | ブロンド・ライフ »